Saturday 1 March 2014

セット


少しだけ舞台裏を許せる範囲でご紹介します。
セットデコレーションのチームの何人かは、実際日本へ行って小道具の買い出しを事前にしてきました。それらを船便で運んだ荷物が到着し、大きな倉庫の中で種類別に棚に収められていました。私たちはセットの種類ー寝室、台所、御殿などに応じて、役立ちそうなものをこの倉庫から拾って来ます。最終的にデザイナーによってどれをどのセットに使うかは決められ、使われなかったものは元の棚へ戻されます。
扇、箸などの小物から、瀬戸物、掛け軸や屏風、大きいものでは写ってる籠や、タンス、米の脱穀機などもありました。私にとっては、ロンドンにできたミニ日本空間で、居る事の苦にならなかったところでした。

隣の Art Dep は、大きい建物などを設計、建築している部署。そこの人たちに連れてってもらって働き始めてから1ヶ月ちょっとくらいの時に現場を見せてもらいました。
普段仕事をする建物から壁を越えて行くと広大な敷地があり、そこへ色んな映画のセットが現れては消え、繰り返されてるようです。結構広いので車や自転車で移動している人も多くいました。ゴルフのカートみたいなのもありました。


お城のセットの表は、ちゃんと瓦と石に見えるのに、一歩裏へ回るとやっぱり!ハリボテなのです。でもあんまりよく出来てるので、口が空きっぱなしでした。現場を見るまで、今でこそ映画って殆どCGで、画面で作っちゃってんじゃないかと思ってましたが、けっこうなところまで実物で作るんですね。
実物感がある、と思っていたセットですが、面白いことに7ヶ月の勤務が終わってから見ると、痛みが激しく、石の部分も軽く見えるし、長持ちしないんだなあと思ったのを覚えています。それはでもひょっとすると私の目が慣れて来たのもあるかもしれない。


ミカとカイが龍と闘ったり、キラがミカとお茶飲むところで使われたセット。正面の朽ち木は本物の木でした。灯籠も、セットを見た時はこりゃ大きすぎるだろう、滑稽だろうと思いましたが、お年始にお伊勢さんに行ったら、これよりでっかいのがありました。バックの杉木立の木も本物、雪は偽物です。消火ホースみたいなので、バラバラと事前に撒いてました。
遠くから見た試合会場/お寺のセット。ここも屋根の先っぽとかがよく出来てて素敵だったけども、木の色が赤っぽくて変だなあと思ってました。でもレンズ通してみるとあまり気にならない色になってて、面白いことでした。


2012年の夏はロンドンでさえ暑くて、お天気の良い気候が続き、気持ち良いので外での仕事をさせてもらえると嬉しかったです。試合会場の旗は、布部の人たち総出で縫い、絵描きさん達総動員でも数が多くて間に合いそうになかったので、私達本職でないものも、ステンシルなどを使って塗ったり描いたりしてました。私はいのしし年で猪を、、、

オオイシの家のある農村部分。このセット、大好きでした。縁側で仕事をしていると、通りを人が通って、挨拶して会話になっていく。なんかこう腰掛けて行きたくなる感じがすごい良かったです。丸でその村に居るみたいで、居心地よくて、なごむセットでした。撮影が終わったらなくなっちゃうのが惜しくて、家1つ丸々もらえないかな、と真剣に思ったものです。火の用心の桶たち、洗濯物、干し柿、暖簾、稲の束や、干し大根、看板や提灯、それから辻にあるお地蔵のお供え物と、いろいろ飾り付けを手伝えて、楽しいセットでした。
これと隣接して、ウエツ村という閑散とした鍛冶屋の多い村のセットもありましたが、そっちは全体的に青いトーンにしてあって、暗くていやな感じでしたから、長居しませんでした。「是よりウエツ村」っていう表札や、鍛冶屋の扉看板などを書きました。


 スタジオ以外でロケに付き合ったのは、血判書の場面だけでした。比較的すぐ行ける Windsor の森で、針葉樹の多い箇所でした。やっぱり偽物の雪が撒かれ(撮影は6月、夏だった)重要な人たちの歩く所は歩道が作られ、機材が運ばれ、ケータリングのお食事も近くにテントがたち、そこだけ小さい村になったみたいでした。実際にカメラが回っている横で見てるのは、キラのお茶の場面についで二回目。今目の前で動いてる人達がレンズ通して画面で見るとやっぱりちょっと違うのが興味深かったです。

ロンドン以外にも、ブダペストで2/5くらい撮影が行われました。天狗の森、出島それからアサノのお屋敷があったように思います。お屋敷なんてホントに良く出来ていて、お庭も奇麗で屋内でしたけど、再び親近感のあるセットでした。ブダペストの町も二回目でしたが、面白かったです。ご飯おいしかったし、温泉はあるし、工芸品で言うと刺繍がとても奇麗で、クッションカバーなどを買って帰って来ました。
そこで本来は血判書のサインのシーンの撮影があるはずでしたから、画面で筆を持たないといけない俳優さんたちに、持ち方などを指導することに。それは次回書きます。


No comments:

Post a Comment