Saturday 28 June 2014

通行手形

DVDを観て、あ、これもやったな、と思い出したのが、通行手形。

旅の役者たちに紛れて、オオイシたちがキラの城の中へ入る場面で、画面には写りませんが、何かを門番に見せてるとこがありました。

通行手形と聞いてすぐ思い浮かべてしまったのが、今でもよく観光名所に行くと、土産屋で売っている木製の通行手形。なぜか将棋の駒型。


関所を通るための通行許可証が要る、と分かって資料を探した際に行き着いたのは、書面のものが主でした。

いずれも左肩が斜めに落ちてるのがおもしろい。
「免」一字で題名なのも良いです。

関所などの資料にも、こういう書面を差し出している場面はありましたが、あの見慣れた木製のものはなし。紙のものだけだったのかしら、と書面のものを準備。キラ自らが、婚礼のために喚んだことにしました。

その後、かろうじて見つかった資料を見せて、デザイナーと話して、木製のものも作る事に決めた。

資料の説明が少なく、通行手形というよりは、身分証明のようなものに見える、、、。まあ、これをもとに、小道具を作る人に、サイズと形、それから焼き板みたいに仕上げてくれるようにお願いする。ひもを通す穴もつけてね。
だいたい、小道具を作る人は、こういう画像資料があって、だいたいが分かれば何でも作れちゃうので、すごい。

できあがったものに、字を入れて、ハンコ(てんで意味が違う、装飾用のはんこ)を押し、それらしく汚して、出来上がり。


通してね、ということで、御通 と書いてあります。

出番はなかったけど、けっこう気に入っていたので、1つ持って帰れば良かったと今思う。

その2年後、帰国中に上京したした際、江戸博物館へ行きました。
そしたら展示物中に、あっさり木製手形があった。



あったんですね。
はんこまで焼いて押してある。
この映画の仕事前か、仕事中に、この博物館に行ってれば、行けてれば、資料探しもずいぶん楽だったろうに、と思いました。
他にも興味深いものが多く、展示も多彩でとても楽しめる博物館だった。








Saturday 21 June 2014

地図、試合会場

セットデコレーションのチームには1人グラフィックデザイナーがいました。彼女は、セットに行って実際にモノを創るよりも、コンピュータ上で画像処理などをする役割。一緒に仕事をよくしました。地図や書面類などを、私の字をスキャンして取り込み、彼女の
った画像と合わせることによってよく創りました。

キラの領地の地図もそのうちの1つです。オオイシたちが攻め込む相談をする時に、画面に少し写ってました。

 アサノの赤穂が、温暖で作物もよく穫れて豊かな国であるのに対して、キラの領地(コウズ 上津。上野介だから?オリジナル設定)は北国で寒くて暗くて、炭坑はあるけど、農作物は全くできない国という設定でした。
高い、不毛な山に囲まれた土地。
参考にしたのはまたしてもオンライン検索でしたが、古地図は人気がある分野なので、色々な大学のアーカイブなどが、気前よくかなりの量の画像を提供してくださっていて助かりました。
撮影が本格的に始まる前で、余裕を持って創れたものの1つです。

あまり時間がなかったのが試合会場(カイが巨人兵(?)と闘うとこ)の方です。
これは会場の見取り図で、案内係などが持っているか、会場に張り出されるという設定で創ったもの。

キラ、アサノの他に、猪とか虎の軍団が参戦してるという設定で、青蓮の祭りという名がついていたので、会場が蓮の花の形。寸前まで、どのチームがどこへ座るか、変更ばかりだったので、印刷したのが撮影当日だった覚えがありますが、画面には登場していない。

この戦闘祭りのシーンは大掛かりでいろんなモノをとりあえず数を沢山創った。
旗なんて見渡す限り、建物の中にも地上にも数えきれないほど。ペインター達の分担ではあったけど、余りの数に周りに居た手すきのスタッフは、一時全員で色塗ってたほど。私はイノシシを沢山塗った。



あとこれも映ってなかったけど、トラ軍団の幟の一つに、ホントにトラの皮を使うことになって、そこにトラと書きました。

畳一畳分より少し大きいくらいのサイズ。余り大きすぎて、ほぼレタリングになってしまった(そんなに大きい筆もなく)。作業台の上に拡げて、その上にまたがって立って書いたので、目から書くものまでの距離があまりなく、全体のバランスを取りにくかったのを覚えています。

その他にまだ創ったものが沢山。それは別の時にまた。5月くらいの気温が上がってきた頃の作業で、外にいるのが気持ち良かったのを覚えてます。私たちが袖無し短パンで作業してる横で、役者さんたちは皆、着物か鎧の重装備でした。



Friday 13 June 2014

舞台の背景幕

DVDを観た上で、意外に長く写ってたなこれ、というもののうちの1つに、舞台の背景として作った幕がありました。ミカとキラの婚礼のお祝いにと上演された舞の舞台(提灯に囲まれてました)の背景です。

だいたい、舞台の背景というと、歌舞伎は場面ごとに変わりますが、能などでは、鏡板の松のように、松の木です。最初にチーム内で、背景の柄について話が出た時に、松かなと自然に思いました。

大ボスのアートディレクターが「これ」と決めて持ってきたのは、紅葉でした。

Hasegawa Togaku (d. 1623), Calligraphy by Tetsuzan Sodon (1531-1617) 

面白い散らし方です。
でも、お庭には桜の花満開なのに、紅葉。と思ったので言ってみたら、じゃあ金じゃなくて銀にする、ということに。
ちょっとは秋らしさをそぐということでしょうか。

 漢字で、と言われたので、隷書で書いてみて、背景に乗せてみましたが、今いちだったようで、



仮名にしました。




うまくいかない恋の有名な歌二つです。




背景に重ねてみて、ボス達のOKを得ます。
OK出ました。
ペインターさんの作業場で全部塗り終わったものに、字を乗せます。キャンバスに、黒ペンキで書きます。出来上がってるものに書くので、失敗したくなくて少し緊張しました。

あと大きすぎてレイアウトが取りにくかった。ほとんど勘でした。
脚立を下りて、遠くから見て、また登って書きました。


画面上では、強い光に反射する銀が良かった。

この照明道具のリサーチもしましたが、調べた結果よりずいぶん派手になっていました。火薬って元禄にあったんだろうか。

また、この櫓(?)をデザインをした人(同じ部屋にいたアート班)に、「この屋根の模様、日本っぽい?中国っぽく見えない?」と心配して聞かれたのを思い出します。この辺り、微妙なところじゃないでしょうか。断言する自信は最後までありませんでした。

やっと観た。

やっとDVDで映画を観ました。

映画館で観るタイミングを逃してしまうと、何か妙に構えてしまって観るタイミングを逃し続けていたのですが、友人宅で一緒に見ることにしました。皆感想は色々でした。
きりんとか天狗を説明しないといけなかった。
あの刺青の人とか、DVDのカバーにもなってるのに出番1秒とか、侍女の眉毛がオカシイとか、将軍の上に金のやかんが乗ってるとか、宇宙服か、とか、つっこみ所満載でした。

セットはすごい奇麗だった。
建物もインテリアもとても良かったので大満足。

衣装も良かった。

全部、どこのセットだか分かっていて、あのタンス、あの花、と思いながら観るのは面白かった。

あれ、あそこにあるのに、写らない、
画面もうちょっと上にあれもあるのに、
これよりあっちの提灯のが上手に出来てたのに、
ああ、あれ、ここに来たんだ、
色々案があったけど、最終的にこれにしたんだ、
これ、あの人が作ってたやつだな、
うーこれは写らない方が良かった!
意外に長く写ってるなこれ、
うわーこのセット全部省略されちゃったんだ!
あれ、このシーンもう終わり?あの部屋は?

ずっとそんなことが頭にありながら、映画観るのって最初で最後でしょうか!

話はまあ。
盛り込みすぎて、1つ1つの場面が切り替え早すぎて、もったいなと思わなくもないけど。背景はすごい良かった。アサノの御殿の室内なんてすごい良かった。村も良かった。

まあ良かったです。

Saturday 7 June 2014

酒徳利

 日程順に行くと、第二班の撮影に付き合ったのが終わった時点で打ち上げだったので、終わりですが、これからまだ言及していなかった作った色々なモノを個別にぼちぼち見ていこうと思います。

けっこう初期から、遊郭や、船長室などのセット用に、要るよと言われていたものの中の1つに酒徳利がありました。

資料を本棚から探したり、画像検索します。


バイヤー達が日本から調達してきたものの中に、多くの徳利もありましたが、、、





元禄時代に、電話番号はあかんでしょう。


買ってきた人も、使う人も、読めないから仕方ない。
ボスに伝えた上、そのまま使うな、という意味でマークしていく。


番号が見えないように、塗り直すことになった。

塗り屋さんから、できあがった連絡受けて見に行ったら、なんかコンクリートかセメントみたいな、けったいな色のうえに、のっぺりしすぎてないですか。瀬戸物か焼き物のはずでは。

もう一回塗ってもらって、その上に、汚れた感じを出してもらう。


字を書いていきます。

黒い水溶性のペンキです。

この上から、もう一度、汚れた風に塗って出来上がり。
いくつ書いたか忘れたけど、倉庫にあった、電話番号のは全部書き直した。



他にも徳利とか、焼き物にもリクエストがあって手を加えました。

また、ブダペストで撮った、出島での戦闘シーン。
徳利の出番がありました。
人の頭を殴ったらすぐ割れちゃう、特殊に作られたもの。よくあるやつ。それにも字を入れましたが、

ほんとに!すぐ!

割れるのです。書き終わって、普通に机に置いたら、
割れる。

意識して、そおっと置かないとだめだった。事前に説明を受けていたにも関わらず、作ってた人の真横で、3つくらい割った。さすがに最後はあきれられた。すいませんでした。でも面白かった。