Saturday 31 January 2015

粉薬の包み方

アサノのお姫様、ミカは、キラに連れて行かれ、寒い北国で軟禁されています。そこへ、カイやオオイシたちが、婚礼の日を狙って攻撃してくることになっています。台本では、ミカが捕われている間に、魔女とのやり取りがいくつかあります。

魔女はキラに気に入られているミカが好きではなく、嫌がらせをします。

なぜかこの辺りのセット設営の時には、私も現場で、デザイナーを手伝って、部屋に置く小物を選んだりすることが多くありました。部屋へ活ける草木を、近くの散歩道から採ってきたりもしました。



 屋内セットと、屋外セットの間には、緑地帯があって、手つかずの林になっているので、材料にはことかきません。なるべく日本の里山で見るのと同じような、藤のつるなどを探して、柱にかける花入れに活けたりしました。

控えの間で、寝室は別にあります。部屋にはちゃんと畳が敷いてあります。

 女性の部屋ではありますが、キラの色で統一されています。座布団もフトンも、布部の手作り、行灯や火鉢などは日本から来たものです。
衣紋掛けも持ってきたものですが、着物を普段着ない私はこれにどうやって着物を掛けるのかさえ分からずに、皆に笑われました。

壁はわざと寒そうな色合いです。
この同じ色は、キラの館全体に使われ、後にオオイシとキラが斬り合う廊下などにも同じく使われました。

この部屋で、魔女がミカに自殺をほのめかすシーンが最初の台本にはありました。彼女の奪還のために、カイも含めて何人もが犠牲になるなら、先に死んでしまえ、と言って、食事中に飲み薬を渡します。

これが粉薬らしい。そして粉薬はどうやって一回服用分をまとめていたのだ、とデザイナーからの質問があり、頭に浮かんだのは、紙やセロハン紙などを折り紙のように畳んで、中に入っていた粉薬でした。私が子供の頃は、よく医者で出されて、飲みにくくて嫌いだったものです。今はカプセルになっているのかな。

しかしあの包みは、どうやって折られているのか。
そこはインターネット様々でした。図解で載せて下さっている方が多くいて有り難かったです。それを、字を書いた紙で折る事にしました。


詩は あふことの絶えてしなくはなかなかに人をも身をも恨みざらまし、百人一首にもある詞です。書いてから、コピーを取ります。折った後にどの辺りに字が見えるのか、位置を決めてから、複数枚コピーします。

らしく見えました。
ちゃんと粉の代わりに、キッチンにあった砂糖を入れて包みました。
でもよく考えたら、元禄の頃にもこの折り方であったのかどうか、そこまで調べませんでした。結局そのシーンはなしになったようです。撮ったかどうかも知りません。

その同じ時に同じシーンのために、おはしも作りました。なぜか。
ミカと魔女が食卓をはさんでいるシーンで、二人用に倉庫から箸を選んでこいと言われたのですが、ぴったりものが色目的にもなく、同じ形の木の箸を選び、色を塗る事になりました。なぜ私が。まあいいか。

口に入れるものだから、大丈夫なように、と言われて、ペインターさんに聞いて塗料を教えてもらって塗りました。


夫婦ものみたいになってしまいました。
魔女は、映像では髪の毛が蛇のように動いて、その先でおはしを持っていたように覚えています。それがこの箸だったかどうか、確認していませんが。もしそうだったら、お二人とも今もお元気でご活躍のところを見ると、口に入れても大丈夫だったようです。



Sunday 25 January 2015

軍配

使われなかったものが続いてしまいますが、試合会場の準備をしている時に、制作を提案されたもののうちの一つに軍配がありました。

今でもお相撲の行司が持っていますし、「軍配が上がる」などという言い回しもあります。試合に参加する各チームの大将たちが持っていたらどうだろう、ということで、リサーチを始めました。

すぐ頭に浮かんだのは川中島でした。
信玄で調べると、肖像画などによく軍配が一緒に描かれています。


信玄が使っていたもの、として伝わるものも現存するようです。
鉄で出来た、剣の打撃を防げるような物から、木や皮製で、漆を塗って仕上げたようなものまで色々あったようです。

言葉が入っていたものも少なくなかったようです。どういう感じにするか、絵でまずアイデアを出します。
各チーム、テーマカラーがありますので、それを元にして、リサーチの結果もふまえて、形にしてみます。




上から、猪、キラ(左)、アサノ(右)、魔物(?)、虎チームの、各裏表の案です。(いまだにこの魔チームの設定が不明、、、)

日本で購入した小物のうち、いくつか軍配が見つかったものの、出場チーム5つには足りません。しかもこういう小道具を作る時は、何かあった時の為に、必ず二つ以上作ります。足らないので、見つけた軍配を参考にして、小道具作りの方に作ってもらいます。


できたものは木製でした。
ペインターさん達に塗料をもらい、ほぼフリーハンドで塗ってゆきます。字もフリーハンドで書きました。でこぼこがあるので、書きにくく、後から線が浮いた箇所などを埋めます。


なんかデザインが、最初の案と違いますね。どう変わったのか忘れてしまいました。
持つ柄の部分の手元に近いところに、作った方が穴を開けてくれていたので、房や紐を通しました。

紫のキラの、裏の字は 吾唯足るを知る、竜安寺石庭のつくばいにもある言葉です。でもなぜこれをキラの軍配に入れようと思ったのか、メモも、私の記憶も残っていません。足りてなかったから、アコウが欲しかったのに。

作った後、セットに配置されたまでは知っていますが、あとどうなったのか分かりません。私の知る限り、画面には登場していないと思います。そういう小道具がけっこう沢山あって、今思うとこれも含めてどれかは手元においておけばよかったと思います、、、。勝手にそんなにほいほい持って帰ったら、きっと怒られると思いますが。デザインから作るまで、楽しい作業でした。


Sunday 18 January 2015

旗指物 はたさしもの

旗指物、と聞いた時、私は何も思い浮かべる事ができませんでした。

馬印、はたさし、とも言うようですが、戦場で敵味方を見分けるゼッケン(!)のようなもののようです。それぞれの家や城、領地の目印が染められた旗を、棒にさして背中に差し、身分証明にします。



これらは今でもある馬追いや、祭りの際の画像です。かっこいいですね。先日書いた幟もそうですが、大量旗とかこの手の大判の布はちょっとドキドキします。

「旗上げ」「〜の旗のもとに」「旗を巻く」などと、今でもまだ通用する言い回しがあります。

馬上の武士が着ける場合は背中に竿を入れる筒のようなものを装着して、そこへ差したようです。

デザイン的にもとても面白く、調べてみると、陣羽織や兜などのデザインと共に、シンプルだけど素敵なものが多くあります。
有名なところで、風林火山と昆、またひょうたんや、六文銭など、今でもタオルやストラップなどになって商品として人気のものも多くあるようです。

試合会場の舞台背景として私たちも作ることになり、字が入っているデザインも多かったので、私もおもしろがって色々考えてみました。

参加チームはアサノとキラ、虎、猪、あと魔物チーム(?)という設定。試合が青い蓮の花の名前のもとに行われる設定だったため、蓮のデザインもあります。
端のメモ書き、国士無双が何を意図していたのか、記憶にないです。
華経と一天四海はともに日蓮宗です。

しかしこれと同時進行で、キラの紫の提灯制作が、とても急がないと間に合わない感じで進んでいました。

結局、字の旗はなしになり、絵になりました。何せ数が多かったので、布チームが竿に通すようにベロを付けてゆくのと、絵チームが塗って行くのとが間に合わず、チームを問わず、絵心が少しでもある下っ端は総出で色を塗っていたのを覚えています。

私も提灯で死にそうになると机に戻って猪を塗っていました。


絵チームが下絵を塗った上に手で猪を写して塗ります。屋外用なので水溶性のペンキです。猪というか何かもっと怖い生き物のようです。でもこういう文献が資料であったのです。塗る前に金箔を貼っている旗もありました。

結果、旗指物というよりは、全て幟、旗になりました。
青天に大量の旗がなびいてる風景は、やっぱり心が踊るものでした。