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Saturday, 12 April 2014

撮影の日。Rolling!



全く余談ですが、先日発売になったブルーレイのパックに、おまけ映像が付いていたそうで、ブダペストでの皆のお習字レッスン風景が一瞬写っていたそうです。
画像、わざわざ送っていただきました。あけみさん、ありがとうございます!





さて。Windsor の森。ごらんの通り、撮影クルー達は半袖、短パンなのに、シーンの設定は冬。雪のつもりで、パウダーのようなものが一帯に撒かれていた。撮影開始が8時だから、機材を準備する人、雪や煙を用意するチーム、もちろん着物や髪を整えて来る俳優さんたちも、もっと早くに来ている。私は、墨と筆と紙だけ持って、ぼさっと8時に到着しただけ。

撮影してる近くで作業してたことはこれまでにもあったけど、すぐ横で、実際に関わるのは初めて。

サインをする主な配役の方や小道具側と、どうしましょうーと打ち合わせ。

巻物自体はカメラに入らないので、実際に巻物を無駄にするよりもという事で、その上に別の紙を置き、その紙にサインする、ということに。

実際に動作を試していただくと、筆が硯箱から取り上げにくかったので、小道具の人に、筆が置いてある部分を高くしてもらった。座る位置や、筆の持ち方や、姿勢などをもう一度確認する。確認のため自ら座りに来て下さった方も多くて助かった。

そのうちに撮影が始まる。

カメラが回っている「Rolling!」という声が幾度かかかると、カメラ外のスタッフは微動だにしなくなる。

よく分からない私でさえ、あ、と緊張するほどの静かさ。

47人含めて、現場には100人越すスタッフと機材。皆が鼻息の音さえ遠慮しないといけないほど。くしゃみ魔の私はなるべく意識しないように(すると余計出る)がんばる。

目の前で、普段、画面の向こうにいる人たちが、
普通に動いていて、それが景色のように見える。
でもすぐ横にあるいくつもあるモニターには、
今カメラが撮ってる風景が写っていて、
それは目の前にあるものと全く同じなのに、
全く違って見えた。

炊いてる煙(霧?)、光の加減、陰影の濃さ、何かよく分からないけど、レンズを通すだけで、肉眼で見えてるものと全く違って驚いた。

何回も同じ部分を撮り直す。
違う角度から撮っているカメラもある。
監督やカメラからの提案もあれば、俳優側からの提案もあり、またやり直す。
墨が乾いたから作り直す。
筆がなくなって(なんで?)スペアを取りに行く。
皆が歩いてはげた「雪」を撒き直す人。
カメラの部品を変えてる人。
ケーブル捌いて、自分が糸巻きみたいになってる人。
皆がまねっこで書いてるサインもどきを見て、皆で笑う。
「なんじゃこの字」「まさにみみずの這った跡!」

なんだか特殊な時間のようだけど、カメラが止まった瞬間に、普段の空気に戻る。

さすがに47人全員は撮らない。前半3、4人、最後のチカラとカイ。
カイは大事なところだから何回も撮る。最後にこれで47人になった、と宣言しておしまい。それで私は用済みそうだったので、もう一度机周りだけ確認して、紙を追加したりして、帰り支度をする。

机の上の、皆の筆跡を見ていたら、オオイシ氏がやっぱり上手なのだけど、カイだって、昨日の今日で、「魁」という難しい字がちゃんと書けていた。

もったいなのでここでは公開しないけど、写りもしないのに、ちゃんと練習して書けるようになってたのにちょっと感動してしまい、その紙を持って、近くで一服していたカイに声をかけにゆく。
「とても上手」というと、めちゃくちゃ嬉しそうに笑って
「ほんとに!?あれで良かった?ありがとう。」
めっちゃ良い笑顔。
そのサインのあった紙は、内緒だけど、記念にそのまま持って帰ってきちゃった。

帰って、卒塔婆との戦いは続き、それからしばらくして、撮影第二班 Second Unit から、再び書道指導のお声がかかる。

何?Second Unit って何するの。




Saturday, 29 March 2014

撮影前の体験リフレッシュ

Windsor は、セットがある撮影所から車で3, 40 分くらいのところにある町に隣接する森で、撮影所からいきやすいので色々今までの映画にも登場している場所。こういう所外で撮影する場所を探してきて、許可を取ったり、予約したりする班もあった。もちろんスタッフや機材の移動、俳優さんたちの送迎をする車、運転手たちをマネージする班もある。

結局、各自が名前を署名した上で、血判する事に設定が変わった。47人、違う筆跡に、無理矢理して、巻物を作り直した。

チカラとカイの名前がまだ入ってない。


血判書サインの撮影日が決まり、その前々日くらいに、サインをする場面に登場する予定の俳優さんたちに、もう一度筆の持ち方などの指導を、と言われた。偉そうに送迎車付き。

実際に皆さんが書く字自体、巻物は写らない。それは、クローズアップなどを撮る、第二撮影班の仕事になる。とりあえず各自の名前を見てもらい、完成品の血判書を見ていただき、字面の確認をし、筆がどう動くかさらってもらった。安定の悪い道にガタガタする折りたたみの机の上での短いレッスン。

オオイシ氏は、実際の内蔵助の筆跡のコピーを3月にお渡ししてから、ご自分で練習なさっていたようで、すっかり見事に彼の署名がすらすら書けるようになっておられた。カイは利き手の左手で書く事に決めた様子。魁、という日本人でさえ難しい一文字を、書き順を確認しつつ、時間いっぱいに練習して、お手本と書く道具一式を持ち帰られた。

書き順について「こうでなければ絶対いけないのか」と聞かれた。
全部、リズムでつながっているのだけど、説明するのが難しい。

チカラ氏にはここで初見。署名を見せて、書いていただく。細部はともかく、運動神経が良いのか、物怖じしないのか、リズムよくどんどん書かれていたのが印象深い。

オオイシ氏から、撮影当日も立ち会って欲しいと言われ、制作側へ話を通すことになった。この間、3, 40分間。皆さん、撮影間の休憩の間に、気分転換になるのか、乗り気で書いて下さって嬉しいことだった。横で切れない刀でチャンバラごっこしてる人たちもいて、楽しい雰囲気だった。

帰ってから、大量の卒塔婆と格闘しながら、撮影当日を迎える。朝8時に始まる夏の日。

Sunday, 23 March 2014

血判書なかみ

血判書署名のシーンは、今までハブだったカイが、47人目に正式に加えてもらう、というけっこう大事なシーンだ。
それは、彼らの旅程中に起きることは最初からの設定で決まっていた。旅に携帯できる形状である巻物であることを提案し、いくつかサンプルを探して、小物を作る担当の人に渡した。お軸が横になった形状だろうけど、私自身作ったことはないので、資料だけ渡してお任せすると、ちゃんと出来上がっていたのに、とても感心した。何でも作れるんだ。


撮影では、実際に指を切って、判を押す仕草を数人が繰り返すだろうから、失敗しても代わりのあるように、いくつも作る。うろ覚えだけど、たぶん20以上はあったと思う。巻物の状態になってから、私のもとへ来た。巻物になった製品に、直接書くことになるので、失敗するともったいない。書き損じのないように。
(実際書き損じた巻物は記念に失敬してきてしまった。)


資料を見ると、署名者がどういう趣旨の元に賛同しているか、という主題が先にある様子なので、でっちあげてしまう。オオイシ起草の、アサノ臣下が署名、という形に。
スタッフはその部分を「legend」と呼んでいた。伝説、という意味でしか知らなかったけれど、「銘」「題、説明文」という意味がある様子!知ってましたか。



これで legend 部分。
撮るのは 47人全員でない。オオイシは起草者なので、先に署名してあるだろうとして、ホリベなどが 2,3番手、そこから飛んで、最後にチカラ、そしてカイという撮影順序。複数個あるうちの半分を、legend とオオイシまでにして、あと半分は 45人目まで書いたものを用意する。

作成を始めた時の設定では、オオイシが前もって 47人分の名前を書いてしまっていて、それに各自が血判を押す、という設定だったので、全部同じ筆蹟にする。



実際の四十七士の名前を調べ、ホリベなど本編に実際登場する名前を脚本でチェックし、実際にない、架空の登場人物(バショウなど)を足して47人になるようにする。

ここで、カイである。
カイは漢字なのか。
漢字ならどの字のカイなのか。音的な、名の由来である、怪物の怪なのか?個人的に私はカイの音から最初から「魁」をイメージしたけれども、それでプロダクション側が ok なのか?漢字じゃなかったら?塊、快、海、他の漢字の可能性は?
平仮名、変体仮名なら、可以、可い、か以、火以?
(上の写真だと可以)

ここまで血判書の形式や設定などを、時間をみて、オオイシ氏に相談させていただいてた。今回もお話をして、いろいろな可能性をお見せした結果、「魁」で行くことに。不憫だけど、姓はなし。

そして!再び「クリア」の問題。46人分の名前(カイ除く)の許可を取らなければならなかった!映画作るの決めた段階でそれは取っておいて欲しかったけど、、、。

前述の通り、当初はサインのシーンを3月にブダペストで撮る予定だったのが、延期に。そして設定も変更になり、各自がサインして、血判をする、ということになった為、最初から45人分、同じ筆蹟で用意した巻物は全部無駄になった。最初から作り直し。こういうもったいない変更は、他にも度々あった。

それは6月頭の頃。ちょうど、お寺、切腹場、墓地のセットを完成させるタイミングが重なっていて、私は卒塔婆やお札など数の多いものと、連日残業で格闘中だった頃、プロダクションから ウィンザーの森へ行ってくれ、と頼まれる。その撮影の前に、もう一度カイに稽古を付けること、その翌日撮影に立ち会ってくれ、ということだった。





Sunday, 9 March 2014

血判書って - 書道指導

現在、私たちが「伝統的」と思っている作法やしきたりは、ほぼ江戸時代に確立されているらしい。時代劇、というと江戸時代が舞台のものが圧倒的に多い。

アクション映画なので、剣道や馬術のインストラクターなどは最初からおり、主なキャラクターの役者さんたちは、よくお稽古をされていたようだった。カイがよく(なぜか)階段で木刀の素振りをしているところを見たりした。

血判書にサインする場面があるのは決まってはいたが、どの程度、大事なシーンとなるのかは台本が変更になる度に変わり、どの日程で撮影されるのかも変わった。巻物など外見の設定は早くに決まったが、中身については、初期の設定では「オオイシが全部前もって人名まで書いちゃってる」ものに、各自が血判のみする、というものだった。

その頃の文書はどういうものだったのだろうか。


題名、文言、そして署名の箇所、日付、それから宛先、書いた者、の様子。〜衛門という名がやたら多くて、文末だけ見ると皆いっしょに見える、、、。

調べる時間も内容も少なかったので、いろいろ不明点があるにしても、皆達筆。このごろは筆でしかないんだから、普段から使ってたら皆しぜんと上手になるのだろうけど、お勤めで書記みたいな書く仕事に就いている人たち以外も皆、達筆だったのだろうか。


上記の人名の部分も、個別のサインというよりは、誰かがまとめて書いたように見える。名前の下部分、花押のように見えなくはないが、例のごとく〜衛門や〜助が模様に見えるだけか。



お殿様方の花押の資料は残っているが、どの程度の人まで持ってたものだろう。



その当時はちゃんとした家の子なら、教育を受けていたはず。47人も元は藩仕えの身であれば、きれいに字くらい書けてたはず。大石内蔵助の筆蹟はさすがに資料が残っているが、大らかなで流暢なものだった。

日本の役者さんたちはともかく、カイは筆も持ったことないので、とんでもないことにならないように、皆の休憩時間をもらって書道教室をすることになった。30分だけ。
撮影はブダペストで行われることに(また)急遽決定、3月のある日の昼休みに、集まってもらうことに。

日本は小学校でとにかく習字が必修なのは素晴らしいことだと思う。ぜひぜひその流れは絶やさないで欲しい。そのおかげで、日本の役者さんにはそれほど教えることはなかった。次回、30分について。(写真なし)